ニュースの概要
三井不動産と三菱地所という国内を代表する二大デベロッパーが、不動産データとAI(人工知能)を手がけるestie(エスティ)と、それぞれ個別に戦略的パートナーシップの基本合意書を締結した。商業用不動産に関する情報整備と意思決定の精度向上を目的に、データ活用とDX(デジタル変革)を共同で進める狙いがある。注目すべきは、本来は競合関係にあるはずの二社が、同じ外部パートナーを選んだという点だ。個社ごとに閉じていたデータ基盤づくりが、業界共通の土台づくりへと軌道を変えつつある兆しとも読める。
引用元: 三井不動産と三菱地所がestieとAI・データ活用で戦略的提携(R.E.port)
分析・見解
競合する二社が同じ相手を選ぶ異例の構図
不動産会社がAI(人工知能)やデータ活用を進める動き自体はすでに珍しくない。しかし、三井不動産と三菱地所という、本来は競合関係にある二大デベロッパーが、揃って同じ外部企業と手を組んだ点は見過ごせない。これまで大手各社は自社の取引データや顧客情報を競争力の源泉として抱え込み、個別にシステムを開発するのが通例だった。今回、その発想の一部が崩れ始めている。背景には、自社だけでデータを整備し続けるコストと、業界全体で基盤を共有した方が得られる精度向上のメリットを比較した結果、後者を選ぶ合理性が出てきたという事情があるとみられる。
estieが握る「業界共通のものさし」という立ち位置
estieは商業用不動産の賃料や空室状況などの情報を収集・分析し、業界特化型のAIサービスとして提供してきた企業だ。複数の大手が同じ基盤を使うようになれば、estieのデータは単なる一社のツールではなく、業界内で物件の価値を測るための共通の尺度(=ものさし)に近づいていく。これは地図サービスを複数の不動産会社が使うことで、エリアの相場観が業界内で揃っていった経緯と似ている。データの出し手が増えるほど精度が上がり、精度が上がるほど利用者が増えるという好循環が働きやすい領域だ。
商業用不動産という「情報の非対称性」が大きい領域から着手
商業用不動産(オフィスビルや物流施設など)は、住宅と比べて取引件数が少なく、賃料や成約条件が公開されにくい。買う側と売る側、貸す側と借りる側で持っている情報量に差がある(=情報の非対称性が大きい)領域だ。この分野でデータが整備されると、これまで一部の担当者の経験や人脈に依存していた査定や交渉の精度が、データに基づく形へと変わっていく可能性がある。今回の提携は商業用不動産の情報整備を主眼としているが、住宅分野への拡張も自然な流れとして想定できる。
追随する企業の広がりが業界標準化の分水嶺になる
今回の提携がどこまで業界標準に発展するかは、他の大手デベロッパーや仲介各社が追随するかどうかにかかっている。一社だけの取り組みであれば自社最適で終わるが、三社目、四社目が同じ基盤に乗ってくれば、データの標準化が実質的に進む。逆に主要各社が独自路線を維持し続ければ、基盤は並立したまま断片化が残る。今後数年の参加企業の広がりが、この提携の意味を決める最大の変数になる。
ビジネスへの影響
データの提供側か活用側か、立ち位置の選択を迫られる
中小の不動産会社や地場の仲介会社にとって、今回の提携は他人事では済まない話だ。業界標準となるデータ基盤が形成されていく過程では、早期に参加してデータを提供する側に回るか、整備された基盤を利用料を払って活用する側に回るかの選択を迫られる場面が増えていく。参加が遅れるほど、自社の取引実績が基盤上の相場観に反映されず、査定や提案の精度で後れを取るリスクがある。
自社データの整備状況を今のうちに点検しておく
基盤に参加する判断をする前提として、自社が持つ物件データや取引履歴がどこまで整理されているかを点検しておく必要がある。紙の台帳やExcel(エクセル)に散在したデータのままでは、外部連携の話が来ても対応できない。今のうちにデータの保管形式や更新ルールを見直しておくことが、将来の選択肢を広げる準備になる。
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