ニセコ長寿村の開発計画から読む、住宅とウェルネスを一体運営する不動産の新しい収益構造

ニセコ長寿村の開発計画から読む、住宅とウェルネスを一体運営する不動産の新しい収益構造

ニュースの概要

北海道ニセコで、住宅とウェルネス機能を組み合わせた大規模開発「Niseko Longevity Village」の計画が前に進んでいる。開発規模は約5万平方メートルで、AID Japanと安藤忠雄建築研究所が設計業務の契約を結んだ。ニセコは海外からの観光客と富裕層の不動産需要を背景に、宿泊や住宅の開発が相次いできた地域だ。今回の計画は、そこに健康や長寿という切り口を重ね、暮らす、泊まる、整えるを一つの場所で完結させようとする点に特徴がある。こうした複合型の不動産では、施設の運営、予約、顧客の管理といった実務が開発の成否を左右する。

引用元: 北海道ニセコで住宅・ウェルネス複合開発計画が進展(Powderlife)

分析・見解

ニセコが売っているのは建物より過ごし方になりつつある

ニセコの不動産は、長いあいだ雪質と眺望を軸に値がついてきた。冬のパウダースノーを求める海外客が増え、コンドミニアムや別荘が次々に建った。ただ、雪に頼る需要は、季節や為替の変動に揺さぶられやすい。そこで開発側が目を向けたのが、健康と長寿である。雪のない季節にも滞在する理由をつくれば、年間を通して部屋が埋まりやすい。世界的にもウェルネス不動産(=健康を軸に設計した住宅や滞在施設)は広がる分野で、今回の計画は、その発想を住宅の段階から組み込んだ点に新しさがある。

安藤忠雄建築研究所の起用が土地の価値を押し上げる理由

安藤忠雄建築研究所が設計に関わる意味は、見た目の話にとどまらない。名の通った建築家の作品は、それ自体が目的地になる。瀬戸内の直島のように、建築を見るために人が訪れる例はすでにある。建物が集客の装置になれば、広告費をかけなくても認知が広がり、住宅の販売価格や宿泊の単価にも反映されやすい。

ただし、作家性の強い建築は工事費が膨らみやすい。雪が深く冷え込む北海道では、断熱や雪対策との両立も簡単ではない。美しさと使いやすさをどう折り合わせるかが、設計段階の最大の論点になる。

ウェルネス開発の収益は完成後の運営で決まる

ウェルネス機能は、造って終わりにはならない。温浴、運動、食事、検診といった施設は、人手と更新費がかかり続ける。住宅を売って利益を得ても、その後の運営が赤字では評判が落ち、次の販売にも響く。ホテル業界では、建物の所有と運営を分ける方式が一般的だが、住宅と一体になると事情が変わる。住民、宿泊客、会員の三者を、同じ設備で受け止めなければならないからだ。

予約の取り合い、料金の線引き、繁忙期の混雑が、運営の難所になる。ここを仕組みで解決できるかどうかが、長寿村という名前に中身が伴うかの分かれ目だ。

人口減の日本で外需型の複合開発を読み解く視点

日本の不動産市場は、国内の人口減で縮小に向かっている。その中でニセコは、海外の資金を呼び込める数少ない地域だ。今回の計画は、国内向けの住宅供給とは別の論理で動く、外需型開発の代表例といえる。

ここに独自の見方を一つ加えたい。健康は、購入の理由であると同時に、購入後に使い続ける理由になる。つまり収益の柱が、売却益から継続利用料へ移る可能性がある。会員制の運動施設が毎月の会費で安定して稼ぐのと同じ構図だ。ただし、為替や海外景気に左右される弱さは残る。国内の需要をどこまで取り込めるかも問われるだろう。

ビジネスへの影響

売って終わりから、使い続けてもらう収益設計へ

不動産会社や開発会社にとって最大の示唆は、利益を出す場面が増えることだ。販売益だけでなく、会費、滞在料、施設の利用料、メンテナンス契約まで含めて収益を組み立てる。そのためには、購入者を点でなく線で捉える必要がある。誰がいつ来て、何を使い、次に何を求めるか。この履歴を持つ会社だけが、継続的な売上を伸ばせる。

既存の管理会社や仲介会社も無関係ではない。自社の物件に健康や暮らしの付加サービスを提携で足すだけでも、他社との違いは出せる。

予約と顧客管理を後回しにしない導入の順番

複合施設のDX(=業務のデジタル化)は、開業後に慌てて入れると失敗しやすい。予約、会員、決済、問い合わせの情報がばらばらに保存され、あとから統合するのに費用がかさむからだ。設計と同時に、どの情報をどこで持つかを決めておきたい。

まず小さく始めるなら、予約と顧客台帳の一本化から手をつける。次に、宿泊と住民の利用枠を分けて管理する仕組みを入れる。最後に、利用履歴から次の提案を出す段階へ進む。この三段階で考えると、投資の無駄が減る。

地方で開発を検討する会社が確かめたい三つの点

一つ目は、通年で人が来る理由があるか。二つ目は、運営を担う人材を確保できるか。三つ目は、需要が国内か海外かを見極められているか。ニセコの事例は魅力的だが、同じ形が他の地域で成り立つとは限らない。小さな規模で試し、利用者の反応を見てから広げるほうが安全だ。

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