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空き家になる前に手を打つ、AIで探る相続と施設入居の兆し

空き家になる前に手を打つ、AIで探る相続と施設入居の兆し

ニュースの概要

辻・本郷ITコンサルティングが、パスコとマイクロベースの共同提案で国土交通省の令和8年度空き家対策モデル事業に採択された取り組みへ、実証協力として加わると発表した。事業の中心は、AIとデータ分析を使って、将来空き家になりやすい住宅を早い段階で見つけることだ。手がかりにするのは、相続の発生や介護施設への入居といった暮らしの節目である。該当しそうな世帯を自治体が把握し、情報提供や相談支援につなげる。空き家になってから対応する従来の流れを改め、発生そのものを防ぐ仕組みを作ることが狙いである。

引用元: AI・データ分析で将来の空き家化を予測する国交省モデル事業に企業が参画(Livedoor News)

分析・見解

空き家対策の重心が事後対応から予防へ動く

日本の空き家は約900万戸、住宅全体の13%を超える水準まで増えた(総務省の住宅・土地統計調査、令和5年)。このうち、売却も賃貸もされず放置されがちな「その他の空き家」は約385万戸にのぼる。これまでの対策は、空き家になった後の除却補助や、管理不全の指導が中心だった。

今回のモデル事業は、その順序を逆にする試みである。火事で言えば、消火から防火へ軸足を移す発想だ。空き家は一度放置されると、所有者の特定や合意形成に時間がかかる。だから入口で止める価値が大きい。

相続と施設入居を手がかりにする理由

空き家の発生には、はっきりした引き金がある。典型は、高齢の所有者が亡くなる相続と、介護施設へ移って住まなくなる転居だ。国の調査でも、空き家の取得原因は相続が過半を占める。

AIの役割は、住民基本台帳、固定資産税、介護保険、水道使用量といった自治体内のデータを突き合わせ、「近く空く確率が高い家」に順位を付けることにある。高齢の単身世帯で、子が遠方に住み、水道の使用量が落ちている。こうした組み合わせは、人が一軒ずつ見抜くには数が多すぎる。機械が得意なのは、この種の地味な仕分けである。

精度より先に問われる、個人情報の扱いと伝え方

ここに最大の難所がある。介護や相続に関わる情報は、きわめて繊細だ。自治体が「あなたの家は将来空き家になりそうです」と通知すれば、受け取る側は監視されたと感じるかもしれない。

見落とされがちなのは、予測の当たり外れよりも、伝え方が成否を分ける点だ。たとえば、予測結果を本人に見せず、「相続と家の片付けのセミナー」を全世帯向けに案内する。対象者の選定は裏側だけで使う。こうすれば、押し付けにならず、必要な人が自然に集まる。技術の勝負は、予測の精度ではなく、案内の設計にある。

先行事例との比較と、全国展開への条件

似た発想は海外にもある。米国の一部の市では、固定資産税の滞納や公共料金の停止を手がかりに、放置されそうな物件を早期に見つけている。日本でも自治体が空き家の実態調査を行ってきたが、現地を歩いて外観を確認する手法で、費用も時間もかさんだ。

今回の実証で成果が出れば、調査の負担は大きく減る。ただし、自治体ごとにデータの形式がばらばらで、そこをそろえる作業が必要になる。さらに、予測が外れた世帯に不安を与えない運用も欠かせない。普及の条件は、技術の良し悪しよりも、データ整備と住民の信頼を積み上げられるかにある。

ビジネスへの影響

不動産会社には相続前の接点づくりという新しい入口が開く

空き家になる前の段階で、自治体が相談の場を作るなら、不動産会社や司法書士、解体業者にとって新しい接点になる。これまで売却や活用の相談は、相続が済んで空き家になってから来ることが多かった。その時点では、権利関係が複雑で、案件化に時間がかかる。

事前相談の段階で関われれば、生前の売却、賃貸への転用、リフォームといった選択肢を示せる。自治体の相談窓口に専門家として登録する、あるいはセミナー講師を担う。そうした動きが、将来の受注につながる。

自治体と組む際に見ておくべき三つの点

第一に、データの扱いである。個人情報の取得や目的外利用の線引きは、事業者側にも説明責任が生じる。委託契約でどこまで触れるのかを先に確認したい。

第二に、成果の測り方だ。予測の的中率だけでなく、相談件数や、空き家化を避けられた件数で評価する設計が望ましい。

第三に、予算の継続性である。モデル事業は単年度の補助が多く、翌年以降の財源が決まっていない場合がある。自社の事業計画に組み込む前に、自治体の中期計画を確認しておくとよい。

今すぐできる準備は、自社の顧客データの棚卸し

モデル事業の結果を待つ間にも、できることはある。自社が持つ管理物件や顧客の中で、高齢の単身所有者を洗い出し、連絡の頻度を見直す。それだけでも、空き家化の予兆を拾える。技術の導入は後からでよい。まずは、誰がいつ住まなくなりそうかを把握する習慣を作ることが、次の一手になる。

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