自動更新から合意更新へ移る賃貸管理。約2,000戸の更新手続きを電子化する背景と実務上の論点

自動更新から合意更新へ移る賃貸管理。約2,000戸の更新手続きを電子化する背景と実務上の論点

ニュースの概要

賃貸管理向けのDX(=デジタル技術による業務の見直し)サービスを手がけるキマルームが、大阪府の不動産会社ズームに対し、更新管理に特化した「キマルーム 更新管理」の提供を2026年10月に始めた。ズームは約2,000戸を管理しており、法令順守を強める一環として、賃貸借契約の更新を自動更新から合意更新へ段階的に切り替える方針だ。新ツールでは更新契約そのものを電子化し、入居者はオンラインで手続きを進めやすくなる。管理会社側でも、更新案内から契約完了までの進捗管理を効率化できる見込みである。更新という地味な業務に、法令順守の観点から手を入れる動きといえる。

引用元: キマルーム、約2,000戸を管理するズームへ更新管理DXツールを提供開始(Excite News)

分析・見解

自動更新をやめる動きの裏にある、管理会社のリスク意識

賃貸借契約の更新には、三つの形がある。貸主と借主があらためて合意する「合意更新」、契約書の条項で自動的に延びる「自動更新」、貸主が拒まなければ法律上そのまま続く「法定更新」だ。自動更新は手間が少なく、長く業界の定番だった。ただ、更新料や更新事務手数料が絡む場面で、入居者が内容をよく理解しないまま進むと、あとから争いになりやすい。更新料の条項は2011年の最高裁判決で一定の条件のもと有効とされたが、有効であることと、トラブルが起きないことは別の話である。法令順守を重く見る会社ほど、この不確かさを嫌う。

紙のやり取りが、更新業務の最も重い負担になる

合意更新に切り替えると、通知を送り、意思を確かめ、書面を交わす工程が増える。約2,000戸なら、更新の時期は毎月どこかで訪れる。紙を郵送して返送を待ち、戻らない人には電話をかける。この追跡を担当者が手作業で続けるのは、現実的に厳しい。制度面の障害はすでに小さい。2022年5月の宅建業法改正で、賃貸借契約書の電子での交付が認められたからだ。残る壁は現場の運用であり、業務の流れごと設計された専用ツールの出番がそこにある。

約2,000戸という規模は、手作業の限界を迎えやすい

大手の管理会社は自社開発のシステムを持ち、数十戸の小さな会社は紙と表計算ソフトでも回せる。その間にある2,000戸前後は、人を増やすか、仕組みを変えるかの分かれ道に立つ。これは私見だが、今回の導入は、中規模の管理会社がDXに踏み出す典型例になりうる。大手のような開発費は負担できないが、手作業の限界は先に来る。管理戸数が増えるほど、一件ごとの更新作業の差が積み上がり、品質のばらつきも広がる。外部のサービスを借りる合理性が、いちばん高い規模帯である。

導入後に問われるのは、返信率と未回答への対応

ツールを入れても、入居者が返信しなければ更新は終わらない。高齢の入居者や、メールをあまり見ない層への案内は、郵送や電話との併用が当面は欠かせないだろう。また、合意更新では「更新しない」という選択肢が入居者にも見えやすくなる。更新料の根拠や条件の説明を、これまで以上に丁寧に用意する必要が出てくる。一方、進捗が見えれば、期限が近い未回答者へ優先して連絡できる。更新の可否が早く分かれば、退去の予測が立ち、空室期間を短くする手も早く打てる。

ここで見落とされがちな点がある。更新手続きの記録が電子で残れば、「いつ、誰に、何を案内したか」を後から示せる。紛争の予防という意味では、更新料の事務効率より価値が大きいかもしれない。

ビジネスへの影響

導入前に決めておきたい三つの運用ルール

一つ目は、更新案内を出す時期である。満了の何か月前に案内し、何日以内の返信を求め、未回答ならどう動くかを、あらかじめ決めておく。二つ目は、電子で完結できない入居者への代わりの手段だ。紙や電話を残す条件を決めないと、現場が混乱する。三つ目は、更新料や手数料の説明文である。画面上で条件を示す以上、金額と根拠が一目で分かる形にしたい。電子での契約は入居者の承諾が前提になるため、同意の取り方も整理しておく。最初に決めておけば、導入後の手戻りが少なくなる。

一度に切り替えず、段階的に進める判断は参考になる

ズームは全戸を一気に切り替えず、段階的に移行する。この進め方は、規模の小さい会社にも使える。まず更新時期が近い物件や、連絡が取りやすい入居者から始める。問い合わせの内容を記録し、案内文を直しながら広げていく。数か月分のデータがたまれば、返信率や完了までの日数で効果を測れる。いきなり完璧を目指さず、改善を前提に始めるほうが、現場の抵抗も小さい。導入費用に見合うかは、一部の物件で試した結果をもとに判断すれば、失敗したときの損も小さい。

数字で残した成果は、オーナーへの説明材料になる

管理会社が貸主から評価されるのは、空室を減らし、収益を安定させたときである。更新が確実に終わる仕組みは、その土台になる。更新の完了率、未回答の件数、案内から契約までの日数を毎月まとめておけば、管理の質を数字で語れる。紙で保管していた更新書類が電子で検索できれば、問い合わせへの回答も早くなる。更新時のトラブルが減れば、苦情対応に使う時間も減る。浮いた時間を入居者への連絡や物件の改善提案に回せるかどうかが、導入の本当の成果を左右する。

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