連棟住宅の老朽空き家が倒壊、法の隙間をどう埋めるか

連棟住宅の老朽空き家が倒壊、法の隙間をどう埋めるか

ニュースの概要

大阪市生野区で、10年以上人が住んでいなかった住宅が倒壊しました。この建物は壁を共有する連棟住宅の一部で、隣の住戸には今も人が暮らしています。空き家だけを壊したくても、建物全体の安全や隣人の権利に関わるため、行政は踏み込みにくい状況でした。所有者の特定、相続の整理、解体費用の負担、居住部分との権利関係など、解決すべき問題が幾重にも重なっています。今回の事故は、一戸建てを想定した空き家の制度だけでは、連棟住宅の危険を取り除けないことを改めて示しました。

引用元: 連棟住宅の空き家に法制度上の対応課題、老朽化物件の倒壊で浮上(News on Japan)

分析・見解

一戸建て前提の制度が連棟住宅で動かなくなる理由

空家等対策特別措置法(=空き家対策の基本となる法律)は、倒壊の恐れがある空き家を「特定空家等」に指定し、助言から勧告、命令へと段階を踏んで改善を求める仕組みです。最終的には行政が代わりに解体する代執行も可能です。

ただし、この流れは一戸建てを前提に組まれています。連棟住宅では屋根や壁、柱を隣の住戸と分け合っています。空き家だけを壊せば、残る住戸の外壁がむき出しになり、雨漏りや傾きが起きかねません。行政が代執行に踏み切れば、その責任を問われる懸念もあります。

切り離し工事の費用が、そもそも誰のものか決まらない

連棟住宅を安全に壊すには、隣との境界で建物を切り離し、残る側の壁を補強する工事が必要です。この費用は一戸建ての解体より大きく膨らみます。大阪の長屋の解体では、切り離しと補強で数百万円規模になる例も珍しくありません。

問題は、費用を誰が負担するのかが決まらないことです。空き家の所有者が分からない、あるいは相続人が十数人に広がっている場合、負担の話し合いは始まりません。隣人は被害者でありながら、自分の住まいを守るために費用を求められる立場にもなります。

空き家は、近所の人が声を上げにくい場所に生まれる

生野区のように古い長屋が密集する地域では、住民同士が顔見知りで、関係が長く続きます。そのため、隣の空き家が傷んでも、苦情を言い出しにくい空気があります。ここに独自の見方があります。連棟住宅の空き家は、建物の問題というより、人間関係の問題として放置されやすいのです。

行政の窓口に届く通報は、匿名でない限り、隣人が告げ口をしたと受け取られかねません。結果として、危険が目に見えるまで情報が上がらず、倒壊して初めて表に出ます。

今後は連棟専用の枠組みと民間の先回りが問われる

国は空家法の改正で、管理不全空家(=特定空家の手前の段階)への指導を可能にしました。早い段階から手を入れられる点は前進です。それでも、連棟の切り離しに関する費用支援や、所有者不明の場合の手続きの短縮は、自治体ごとの対応にとどまっています。

今後は、連棟住宅に特化した補助や、隣接住戸の同意を得やすくする仕組みが議論されるでしょう。同時に、法整備を待たず、民間の不動産会社が所有者との橋渡しを担う場面も増えていくと考えられます。

ビジネスへの影響

連棟物件は査定の段階で隠れた負債を見抜く

連棟住宅の売買や仲介では、価格の見かけより、切り離し費用と隣接住戸との合意の有無が収益を左右します。査定時には、壁や屋根の共有範囲、境界の確認状況、隣人の居住実態を必ず確認してください。

費用の目安を早めに見積もっておけば、売主にも現実的な価格を説明できます。解体を前提に買い取る場合は、切り離しと補強の費用を仕入れ価格から差し引く判断が欠かせません。

所有者に近い立場から、相続前の相談窓口になる

連棟の空き家が放置される最大の原因は、所有者や相続人が動かないことです。管理会社や仲介会社は、相続が発生した段階で早めに連絡を取り、売却、賃貸、解体の選択肢を並べて示す役目を果たせます。

自治体の補助制度や、空き家バンク(=空き家の売り手と買い手を結ぶ公的な仕組み)の活用を案内できれば、相談の入り口として信頼を得られます。

自治体や近隣との連携を、リスク管理の一部にする

管理を受託する物件が連棟の場合は、自治体の空き家担当課と顔の見える関係を作っておくと安心です。危険を感じた時点で相談できれば、倒壊後の責任追及を避けられます。

隣人への定期的な声かけも、見回りと同じくらい有効です。連棟物件の管理費には、こうした連絡の手間も含めて見積もる必要があります。

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